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2012年8月28日 3:23 AM

「ゼニの病い」800年

鎌倉時代のことを調べていたら、面白い記録に出会いました。「百錬抄」という全17巻の記録の中にこんな一節があるのです。
「近日、天下上下の病弊はこれをゼニの病と号す」
「百錬抄」は平安中期から鎌倉中期まで、その日起こった出来事を朝廷の記録係が書き留めたものです。上記の一節は1179年6月の日付になっています。
そのころはは荘園制度が崩壊しつつあり、貨幣の流通が盛んになった時代です。まだ日本には鋳造技術がなく、商取引は物々交換が米を媒介にしていました。
そこへ日宋貿易によって宋の貨幣が流れ込んできたのです。貨幣を使ってみて人々はその便利さにとりつかれました。かさ張らないし、貯蔵もきく。何とでも交換できます。取引がはるかに簡略化されます。
しかし公家たちは大反対しました。年貢は米で入ってきます。換金の手間がかかります。さらに市場原理が持ち込まれて、年貢米の値が上がったり下がったりしてややこしい。米と違って拝金主義に陥りやすくもあります。人々がゼニを重宝するのを公家たちは苦々しく見ていました。卑しい連中と思っていたのでしょう。
1192年(建久3)朝廷は貨幣の使用を禁じる決定をし、幕府に通達しました。ところがそれを待っていたように宋銭はすざまじい勢いで流通を始め、どうにも止めようがなかったのです。「天下上下の病弊はゼニ」と断じた記録係は、人間がいかにゼニに弱いか、ゼニのためならどんな悪事にも手を出しかねないことを見通していたのでしょう。
800年前に発病したゼニの病いは収まるどころか今日猖獗をきわめています。金のために他人を騙したり裏切ったりときには人を殺したりします。商品価値がすべてに優先し、
人は金を稼ぐために生まれたかのような現状です。それが個人レベルの現象ならまだしも
さまざまな既得権層が発生して、社会を動かすようになっています。
一例をあげるなら原発の再稼働です。見せかけの安全基準をきめて政府は大飯原発を再稼働しました。福島原発の事故原因もまだ確定しないし、津波や大地震への対策もできていないのに、廃炉や除染の見通しも立たないうちに、ともかく発進してしまいました。電力会社やその関係先、官僚から財界からメディアから組合から既得権層が一致して、ともかく動かしてしまえとなったのです。
みんな「利益」のためゼニのためです。人類の未来にかかわる幾多の問題は棚上げしてともかく今日の儲けを逃すまいとするのです。病膏肓というべきでしょう。貨幣経済が流入してわずか800年のうちに病はすっかり普遍化し、人類の滅亡につなりかねない状態になりました。
私自身金のためにエロ小説を書きまくった時期があって、他人のことをとやかく言えないのだけど、原発ムラの連中はうしろめたさも何もない様子。公聴会などでしゃあしゃあと原発必要論をぶっています。もしも大地震と津波がきて福島の二の舞いになったらどうする気なのだろう。
首相官邸前の市民のデモ、公聴会におけるアンケートで90%の人が将来の原発の比重をゼロにしろと答えたことにまだ救いはあります。実際30年後のゼロ%を目標において原発漸減の計画をしっかり建てるべきなのです。
いくら資本主義の社会でもゼニの病いの重症化をこれ以上放っておくと取り返しのつかぬ事態になるでしょう。わたしの場合は同じゼニの病いでも金欠病のほうですが。