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2012年2月3日 3:03 PM

ああ石原慎太郎連合艦隊司令長官

石原都知事が新党を結成、橋下大阪市長の維新の会や渡辺喜美代表のみんなの党との連携が噂されています。衰微する既成政党のまんなかでキャスチングボートを握るかもしれません。
 そうなったら石原首相の目が出てきます。生まれるかもしれない石原内閣にわたしは連合艦隊を連想するのです。
 いま政界を見渡して石原氏ほど首相の座がしっくり似合う人材はいません。野田総理のあとにだれを想定しても石原氏に比べれば小粒です。人間としての器量が小さいし、教養が不足している。
  戦後マッカーサーが旧制高校を廃止して以来、政治家が小粒になったとわたしは思います。旧制高校は実学のみでなく文学、哲学、歴史学、倫理学など人間形成 を目的とした学問を生徒に叩き込みました。池田勇人、佐藤栄作、中曽根康弘など戦後の大型首相はみんなこの旧制高校出身者です。現在の松下政経塾はかなり の難関らしいけど、卒業者の顔ぶれを見ると人間形成のための教育をうけたとはとても思えないのです。
 戦後の新制大学出身の政治家ではで石原氏はめずらしく教養を感じさせます。各国首脳と政治経済ばかりでなく芸術文化を語り合える人物です。
 なにしろ石原慎太郎といえば、わたしとほぼ同世代のかがやかしい作家でした。一ツ橋大在学中に「太陽の季節」で芥川賞をとり、わたしたち文学青年の度肝をぬいたものです。
 旧道徳に束縛されない若者の生態や新しい価値観の誕生をわたしたちも表現したいと思っていました。だが、解放された若者の性をリアルに書くことなどゆるされない。不倫の愛を美しく描いた川端康成の手法に学ぶつもりだったのです。
 そこへ「太陽の季節」です。主人公が障子の向こうからペニスで障子を突き破って部屋にいる女の子に見せるシーンには、
 「なるほど、こんな書き方がゆるされるのか」
 と大ショックをうけました。
 しかも男女の交合シーンはごく簡単にしか書いていません。マイッタとこれには思わされました。当時の文学青年はみんなそうだったと思います。当時の若者はほとんどが左翼ががっていたが、石原氏は政治的には保守、文学的には驚異的革新だったわけです。
 大学卒業後、石原氏はたちまち流行作家になりました。ハードボイルド調の作品をつぎつぎに文学雑誌に発表しました。サッカーや登山、ヨットを題材にした佳品があったのをおぼえています。当時隆盛をきわめた野球に縁のなかったあたり、いかにも富裕な湘南族の代表者でした。
当時わたしたちと同世代の大スターは石原氏と長嶋茂雄、小沢征爾の三人。まだ会社の下っ端だったわたしにとってははるか雲の上の存在だったのです。(いまもそうだけど)
 石原氏は30歳をすぎて、いくらなんでも現実社会と無縁のまま作家をつづけるのは難しかろうと思われた時期に政治家に転身しました。
 参院選に出馬、石原裕次郎の人気もあって300万票をとりトップ当選したのです。
 作家がしんどくなったから政治に乗りだしたとわたしたちは邪推しました。、事実はベトナム戦争を取材して日本の将来に危機を感じたからでした。
 自由主義社会の南ベトナム、共産主義社会の北ベトナムがアメリカ、ソ連の代理戦争の格好で戦ったのですが、戦争は長引きました。南ベトナムのインテリ層は疲れ果てて戦争に無関心を決め込むに至ったのです。
石原氏は現地取材でそれを見て南ベトナムの敗北を予測し、自虐史観による反戦平和主義の日本の将来を危ぶむようになりました。だから政治に進出したのです。作家業に疲れたせいもあったと思うけど、ベトナム
戦争は予想通り南の敗北に終わり、彼の予測の正しさを証明しました。当時日本は反戦思想がつよく、彼の政治姿勢は反動呼ばわりされたのですが、彼の姿勢にブレはありませんでした。
 以後彼は政治家、作家の二足のワラジをはいたのですが、作家活動でも存在感は保っていた。衆院に鞍替えして環境相、運輸相も経験してボロを出さなかった。世界を語れる政治家になったとわたしは思います。
 彼は一時政界から身を引いたあと、都知事になりました。同じ時期大阪府知事は横山ノックで、わたしは東西の文化水準のあまりの違いに大いに落胆したものです。
もっとも東京のある有識者は、
「東京だって裕次郎軍団の応援が大きかったのです。大阪と大して変わりませんよ」
 ということでした。
  フランスの作家アンドレ、マルローは文化大臣をつとめました。ほかにも作家の大臣はいたはずですが、文人宰相はいなかったと思います。その意味で石原首相 を待望するのですが、文士に首相がつとまるかという不安もあります。石原氏はあまりにエリートでありすぎました。切った張ったの修羅場はそんなに経験して いないはずです。
 テレビに出ると、やたらと威張っていて大坂では不評です。しかし選挙のことばかり心配する政治家たちの大衆迎合よりはマシであり、良い仕事をしてくれるに違いありません。
 ともかく石原氏は首相として座りがよろしい。連合艦隊司令長官です。参謀長は渡辺喜美、第一航空艦隊長官は橋下徹。堂々の出航となるわけです。案外すぐにボロが出るかもしれないけど、ハワイ空襲ほどの大戦果をあげてくれそうな気がするのです。