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2011年10月13日 2:44 PM

お茶しませんか/78歳小説家、電車男を読む

涼しくなって日課のウォーキングの間にもあまり飲み物をとらなくなりました。。暑いころは自動販売機のペットボトル入り日本茶をかならず1本飲んでいのに、最近は2日で1本になりました。
  最初のうちは甘味のあるスポーツドリンクを飲んでいました。酷暑の時期、冷えた甘い飲料はたまらなく美味です。だが、どうやら血糖値に悪影響があるような ので日本茶に変えました。「おーいお茶」「生茶」「十六茶」などいろんな銘柄のなかで、わたし主に「爽健美茶」を飲んでいます。別に美味いとも思わない が、欲張ったネーミングが気に入りました。。飲み心地がさわやかで、健康と美容に良いというのだから、話半分としてもつい手が出てしまう。先日老人たちの 酒席で、最近缶ビールのミドルサイズが¥220なのに日本茶のペットボトルが¥150(なかには¥130もある)は高すぎるという話になりました。ビール とは生産量が違うからまあ仕方ないのだろうが、老人の多くがウォーキングにはげんでい現状から、冷えた日本茶の将来は明るそうです。¥130はまもなく実 現するでしょう。全国のジイサンたちしばしお待ちあれ。
 先日高校の同窓会のツアーで帰郷したおり、東北新幹線の車中で隣り合わせ元同級生の女性が「爽健美茶」を飲んでました。
 「このお茶、ハトムギ、玄米、緑茶、大麦、はぶ茶とかいろんなものが入っていて体にいいのよ」
とラベルを示して彼女はいっていました。。
 その女性にむかしわたしは想いをよせたことがあるので、なんとなくうれしかった。お茶の嗜好が共通であることで、なにかが通じあったようなほのぼのとした気分でした。
「おれもそのお茶、好きなんだ」
わたしはいいました。きいて彼女も似たような気分なのだろうと思ったのでした。
ところがこのブログを書くにあたって調べてみたら、ペットボトル入り日本茶で女性に一番人気なのが「爽健美茶」でした。なんだかわたしはシラけてしまっ た。彼女は別段なんの考えもなく一番人気の銘柄をえらんでいたにすぎないのです。。そこになにか特別な要素を期待したりするのは、たんに希望的観測という ものです。現実の彼女はトシ相応に立派なおばあさんであり、当方も間違いなくジイサンです。それでもほのぼのとしたりするのは、60年前の片想いの記憶が 土中に眠る一粒の柿の種のように意識の底に埋もれていて、何かの拍子に急に芽を出しかけただけのことです。色恋沙汰にはもう関係がない年齢なのだとという 事実を認めきれない往生際のわるさでした。
 しかし友人の一人は
「つまりあんたは大多数の女性とお茶の好みが一緒なんや。これはモテる要素の一つやで」
 といってくれました。もつべきものは友なのです。
 ちなみに男性に一番人気の銘柄は「おーいお茶」だそうです。女性は健康と美、男性は失われた父権に執着するということでしょう。一つ一つの味にそんなに変わりはないのだから、第一位の両者はともにネーミングの勝利といってよい。
、 先日必要を感じて、5,6年前の大ベストセラー「電車男」を読みました。2ちゃんねる掲示板に主人公の「電車男」が恋愛日記を書き、その読者が激励だの助 言だの感想などを投稿します。日記と野次馬の書き込みによって物語が進行するという画期的な読み物です。わたしは5年ほど前に読んで、面白いと思いました が、従来の小説とはあまりに違う読み物なので、違和感が先に立ってそのままわすれてしまいました。今回手にとったのは、ブログなどを始めた以上、ITの世 界と若者の風俗文化をもっと良く知りたいと思ったからです。
 読んでみて多くのことが印象に残りましたが、中で一つ「紅茶」の件が 驚異でした。主人公の「電車男」が恋する女性宅に呼ばれ紅茶をご馳走になります。そのさい紅茶の好みの銘柄を訊かれるのですが、主人公の知っているのは 「午後の紅茶」のみ。少々肩身のせまい思いをします。そのいきさつを日記に書くや否や野次馬からいくつも投稿があり、ダージリン、アッサム、アールグレ イ、オレンジぺコーなどイギリスの紅茶の銘柄を寄ってたかって教えてくれます。そこで知識を得てデパートへ買いに行く野次馬もいる。最終的に彼女の淹れて くれた銘柄は英皇室御用達のベノアティーだと判明するのですが、野次馬の若者たちがよくもこれだけの銘柄を知っているものだとつくづく感心しました。「お 茶しませんか」という表現にも、どうも馴染めないのです。
 ついで思い出したことがあります。もう十何年か前、わたしは京都新聞に小説を連載しました。途中、「日本では紅茶はリプトンが高級品とされているが、本国ではさほどでもない」というくだりがありました。すると担当者が青くなってとんできて、
「京都にはリプトンの支社があるので、なんとか書き換えてください」
 と懇願するのでした。こだわることもないので適当に書き換えましたが、いま「電車男」を読んで時代は変わったなあとつくづく思った次第です。わたしなんかいまだにリプトン=ソコソコ高級のイメージにとらわれているのに。