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2013年4月17日 3:52 PM

きみも白マスクにユニクロかい

犬をつれて近所を散歩していると、出会う人出会う人が白マスク姿などでびっくりします。最近は減ったけど、ユニクロのダウンジャケ ットの姿の人も多かった。
むかしヨーロッパでは日本人といえば「眼鏡にカメラのちび」が典型だったようです。最近は白マスクにユニクロというわけなのでしょう。
ダウンジャケットは軽いし、あたたかいし、安価だし、あれが流行するのは当然です。わたしはむかしスペインで買ったロエベの革コー トを得意になって着ていたのですが、ユニクロのダウンジャケットにくらべたら、重くてイカメシくてまるで実用になりません。
おまけに高価です。かつて高価な外見はファッションの一要素だったのだけど、いまどきロエベなんか着て歩いたら、没落階級のジイサン としか思われないでしょう。
ユニクロのダウンジャケットは日本人の服装からから富裕者の虚栄を奪ったわけです。しかしユニクロのダウンジャケットはカーキ色が 多いので戦時中の国民服を連想させます。

太平洋戦争の勃発とともに大人の男性は全員が国民服を着るようになりました。カーキ色の詰襟服に戦闘帽、ゲートルがセットになっていました。靴は編み上げ靴だったと思います。一時期中国人や北朝鮮の金正日が着ていた人民服に 似たこの上なくダサイ統一服です。
戦争が終っても極度の衣料品不足から日本人は数年間、国民服を着ていました。そんな時期、わたしの下宿していた秋田県大館市に当時京都府庁に勤務していた父がやってきたことがあります。
引退を決意して田舎暮らしの準備にきたときのようです。父はグレーのスーツにネクタイ姿でソフ帽をかぶっていました。一緒に駅へ 向かうあいだ、国民服だらけの街なかで父はなんともカッコ良く見えました。あのときほど父を誇らしく思ったことはありません。そうい えばユニクロのダウンジャケットも見た目には冴えないしろもの。戦後期と同様、ファッション性を二の次三の次にせざるをえないほどデフレが深刻だったということでしょう。
一方、白マスクのほうは日本人が好きで流行らせたわけではありません。最初は花粉症対策でした。インフルエンザ対策がそれにかさな りました。病院にはマスクをした人が大勢います。その人々はゴホン、ゴホンと盛大に咳をします。ウイルスがマスクのガーゼなんかたや すく突き破ろうという勢いです。

電車のなかでも同じ目にあいます。わたしもインフルにやられたことがあるのに、そんなことは棚にあげ て、つい渋面をつくったりします。そのくせ家に帰ると、うがい、手洗いをケロリとわすれてそのまま食事したりするのだから、他人に難癖をつける資格はありません。
白マスクが厄介なのは、人の顔がわからないことです。すれちがって会釈されたりすると、ハテいまのはだれだったかと考えこまざる をえません。よけいな神経を使います。

以前北新地の飲み屋で、
「アベさん、しばらくです。おわすれですか」
とさる紳士にいわれて困惑したことがあります。
当時世話になっていた歯医者さんでした。その人はいつもマスクをしていたので、わたしはかれの素面を見たことがなかったのです。そ のむね弁解すると、かれは、

「そうかあ。気がつきませんでした。診療中はいつもマスクをしているので、それが特殊な状態と思えんようになって」
とかえって恐縮されてしまいました。
外を歩いていてマスクをした妙齢の女性に出会うと、ちと残念な気がします。せっかく美人と出会ったのに、美人を見る楽しみを一つ失 ったような気がするのです。男にとって美人と出会うのは外出の一つの楽しみです。マスクをした女性はケチで出し惜しみしているような 気がするのです。
女性のほうもマスクをした若い男に出会うと、イケメンを見るよろこびを一つ逃したように思うのではないでしょうか。
しかし、考えてみると、その逆もありえます。出会うとすぐに目をそらせたくなるご面相もこの世には多々あります。マスクはそれをか くすために役立つ場合もあります。しかし、そんな目的でマスクをする人はまずいません。だれもがこの世で生きぬくために少々の自惚れをもってい ます。自分の顔はかくすには惜しい顔だとみんなが心の底で思っているのです。
花粉症やインフルよりもいまはpm2,5や鳥インフル、黄砂が脅威になっています。中国の大氣汚染や環境破壊のせいで、マスクなし で出歩ける日々は遠くなりました。わたしたちの中国嫌いは尖閣列島だけが原因ではないのです。
ともかく日本人といえば「白マスクに黄色のユニクロ」という国際イメージができあがるのは御免こうむりたいものです。

  • http://twitter.com/le_trou_noir la nebuleuse

    昔、蛍雪時代で読んだ「山脈燃えて」という小説の紙ファイルが出てきました。とても面白くてファイルかしておいたものです。でも電子化しないともう危ない状態です。(電子)書籍では出ていませんか?