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2014年8月27日 1:34 PM

わが大発見 パソコン犯人論

この2~~3日、外出すると風景がグラグラ揺れたり、足がふらついたりします。
いよいよ持病の小脳変性が進行したのかと不安になります。小脳変性は運動神経
を支配する小脳が委縮だか溶解だかする病気で、目下のところ難病の一つとされ
ています。
でも車椅子生活や寝たきりになるには10年、20年かかるのが普通とのこと。わ
たしのようなジイサンには痛くも痒くもない話です。若くして発病した人の手記は
いずれも痛ましいがぎりだけど、わたしは目まいとふらつきのほかさほどの症状も
なく、大脳に萎縮のおよんでいない幸運に浸るばかり。若い同病者の方々には申し訳
ないくらいです。
もっとも急に進行しない保証もないので、医師にいわれた禁酒は実行し、リハビリ
も毎日やっています。とくに運動機能の低下を食い止めるべく筋トレとウォ―キン
グに汗を流し、今年のクソ暑いのには閉口頓首、という具合です。
しかし、種々の不便もあります。まず禁酒。わたしは妻と毎夕赤ワインを嗜むのを
楽しみにしていました。実際、おかげで夫婦仲はかつてないほど良好だったのです。
これが禁止とは辛い。妻に禁酒を付き合せるわけにもいかんし、妻も私に遠慮しつ
つ飲んでいます。
酔っぱらうと足がもつれる。歩行能力に邪魔が入る。だから小脳変性に酒はよくない
という以外、禁酒の効能について納得のゆく説明はありません。
半面、赤ワインの効能は近年ますます強調されています。ポリフェノールが血管の内
皮細胞を強化する、だから動脈硬化の悪化を止めるとか、視機能の改善、細胞の若さ
の保持、血流の改善、肝機能の改善などがいわれます。この万能薬赤ワインもやはり
飲んではいかんのですか。先日若い神経内科医に問い糺してみたところ、納得のゆく説
説明はありませんでした。理論的に説明できないものを禁酒だなんてケシカランと思う
のですが、飲んで悪化してもツマランので、まだ控えています。
そもそも小脳変性の原因がまだわかっていないのです。わたしの推論では、大きな原
因はパソコンにあります。というのはわたしがふらつきを感じ始めたのは3~4年前
のこと。その時期からわたしはパソコンで小説を書きだしたのです。
京大病院へ検査入院中、わたしは担当の女医さんに、
「原因はパソコンではないでしょうか」
と質問しました。すると彼女は、
「アベさん、パソコンは腦に良い影響をあたえるんですよ」
とやさしくたしなめてくれました。
美人女医の言だから私は納得したのですが、いま思うと疑念にかられます。医師の使
用するパソコンはフォームがきまっています。打ち込む文字もほとんどが数字。文章
とはわけが違います。その点われら小説家は、漢字の変換やら仮名遣いやら、漢字と
仮名の混ぜ合わせやら、独自の文体を創り出して書かねばなりません。数字や記号を
パソコンで打ち込むのとはわけが違います。2~3枚書いただけで私の場合、ぐったり
と疲れるのです。ほかに原因があるとは考えられません。
いま書いている長篇小説が完成しだい、わたしは以前どおり鉛筆書きに戻るつもりです。
そのほうがパソコンよりもずっと能率的だし、持病の進行が止まる可能性もあります。
病気の成り立ちにについて理論的裏付けがない以上、わたしのパソコン原因説にも自
己主張の権利があります。案外これは大発見かもしれませんぞ。小母方サンのSTA
F細胞と同じくらいセンセーショナルなニュースにならないとも限りません。「ネイ
チャー」誌から原稿依頼はないでしょうか。いや、無理でしょうなやっぱり。