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2012年2月16日 3:02 PM

エッチするのも国のため

 いまや「生めよ殖やせよ」が国民的急務であります。しっかりガンバらないと国が滅びまっせ。
 少子高齢化がいわれて久しくなります。一方で若者の草食系化や結婚率の低下が指摘されます。増税談義や年金改革もよろしいけど、国家の存亡にかかわるこの長期的課題について、政府は「若者よ欲情せよ」のキャンペーンを実行しなくてはいけません。
  戦争中、「生めよ殖やせよ」が政府のスローガンでした。戦争により多数の人命が失われ、軍や産業の衰退を防ぐために政府は国民に「あっちもガンバレ」と太 鼓を叩いたのです。おかげでわたしの同世代には兄弟姉妹の多い人がたくさんいました。5人きょうだい、6人きょうだいが珍しくなかった。わたし自身も6人 きょうだいの長男で、いろいろ苦労したもんです。
 ところが敗戦で食糧難の時代になると、一転して「産児制限」がさけばれました。わたしの母なんか村の婦人会長として率先して産制運動の先頭に立っていました。中学生だったわたしはなんだか恥ずかしくて仕方なかったのです。
 あの産児制限ブームの痕跡が現在でも明らかに残っています。あれ以来、多数の子供を持つ夫婦はなにやら野蛮、無教養な印象をあたえるようにになりました。「貧乏人の子沢山」などというカルタの文句も拍車をかけたようです。
 子供の数は2人が標準であり、せいぜい1姫2太郎が限度という常識が生まれました。女性が出産や育児の負担から解放され、共働きによって「健康で文化的な生活」をするのが規範となったわけです。
 あわせて平均寿命がぐんぐん伸びました。出生率が低下したのに日本の総人口は2005年まで減少しませんでした。人間が長生きするようになったので、生まれる子供が減っても最近まで人口は減らなかったわけです。
  だが、2005年をピークに総人口は下降し始めました。この調子だと2050年ごろには現状の約1億2000万が9000万程度になり、産業も市場も規模 が縮小しエライことになるようです。政府も自治体も収入が減ってなんのサービスもできなくなる。医療も教育も荒廃し、年金は破産。救急車も消防車も来なく なるらしい。プロ野球もJリーグもテレビも成り立たなくなります。なによりも軍隊が弱体化して中国の属国になるしかないという人もいます。
 わたしなんか先が短いから、なんとなく実感が湧かないのだけれど、すこし現状を勉強するとゾッとするしかありません。人口の減少と世界一の高齢化には至急手を打たねばならないようです。
 なんで若者は草食系化したのか。わたしの見るところ映像文化の過度な普及に原因があります。ともかく男女の性行為に神秘性がなくなりました。男と女が寝室でなにをするのか、いまや小学生でも熟知しています。
  わたしたちの思春期は妄想の時期でした。男と女は密室でなにをするのかあれこれ悩まし想像し、おかげで欲望に突き動かされ、女性に対する憧れの念も抱いた ものです。だが、いまはパソコンなどで男女のあられもない絡み模様がたやすく目に入ります。あれでは妄想の余地もない。映像に刺激されて自慰をしてそれで 終わり。苦心して女性を口説き、人間関係をつくってコトにいたる感激もよろこびも味わえないのです。
 おまけにゲーム機やらパソコ ンやらに気をとられて人と接する機会がすくない。だから人間関係のつくりかたたが不器用で、モテない男は想像を絶するほど孤独です。そこでまたAVに自慰 の悪循環。「電車男」だの【風俗いったら人生変わった」などという携帯小説を読むと、モテない多くの若者がどんなにオドオドと女の子との接触を求めている かよくわかります。
 あまりたやすく映像によって性の醍醐味が手に入るので、現実の女との関係作りができなくなったのでしょう。こ れが草食化の一番の原因ではないでしょうか。女性の場合はよくわからないけど、保育所の不足とか共働きの必要とか結婚、出産、育児の社会的条件が不足だと いう女権論者の主張はもっともです。家事、育児より仕事という風潮もあるのでしょう。そのほうが人間として充実した人生を送れるといわれると、まあそうだ とだというしかありません。
 でも少子化は国家的課題です。戦争中と同様「生めよ殖やせよ」と国家が音頭をとるべきなのです。この点40そこそこて7人の子持ちである橋下市長など時代にふさわしい人材でしょう。
 終戦後、戦地から若者がつぎつぎに復員して、待ちわびていた娘たちと「産児制限」に逆行するあやしげな風潮の蔓延した時期がありました。ラブホなんてない時代だから、山中で絡み合う男女も少なくなかった。それを中学生が物陰から覗き見て
「○○コするのも国のためェ」と囃し立てたものです。いまなら「エッチするのも――」というところでしょう。
 老いた小説家としては若者をその方面で鼓舞する話を書きたいと思うのです。でも、ITのおかげで本を読む若者は激減しました。なんとかならんもんかね、まったく。