mv

2013年9月24日 1:13 AM

ゴルフ大会、うちの犬が淋しがる

近くの茨木カントリー倶楽部でパナソニックオープンという大会が開催中です。わたしは3日に1度くらい飼い犬のラビをつれてゴルフ場沿いの道を歩くのですが、期間中は大変な混雑です。だが、ラビは淋しそう。研修生のおねえちゃんたちに会えないからです。大会中研修生たちはどうしているのでしょう。
「オープンというからには研修生たちも出場するのかな」
妻に訊いて笑われてしまいました。
「とんでもない。一流プロの大会なのよ。プロの資格テストを受ける資格をもらうのさえ難しいのに、研修生ではまだまだ」
プロテストを受ける資格をとるまで数段階あるそうです。初めて知りました。どの道によらずプロでやってゆくのは大変なようです。
研修生のおねえちゃんたちとの馴れ初めは、今年の春ごろでした。ある日、ゴルフバッグをさげた若い女性3人とゴルフ場沿いの道で出会ったのです。
「きゃあ。可愛い。おいでおいで」
3人は足をとめてラビを招きよせました。
可愛い、可愛い。癒されるわ。3人は代わる代わる撫でたり抱きしめたりします。ラビのほうも馴れたもので、飛びついたりほっぺたを舐めたり返礼するのです。
「なんという名前ですか」
「ラビットのラビ。うさぎ年の生まれやからそう呼んでいるよ」」
「ひやぁ。まだ2歳足らずですね。可愛いわぁ」
そんな会話のあと、きみたちはゴルファーなのか、とわたしは訊きました。一般のゴルフ客とは様子が違うし、キャディでもなさそうだったからです。わたしはゴルフをやらないので、研修生というのを初めて知り、プロの卵だろうと理解したのです。
その後月に2~3度のわりで彼女らに会いました。出会うと彼女らは「ラービー」と呼んで、跳びつく犬を可愛がってくれます。ふつう女性は「ラビちゃん」呼ぶのに彼女らは呼び捨てです。一般女性と感性に差があるのかもしれません。ラビはすっかり慣れて、彼女らに会うのを心待ちにするようになりました。
それだけの付き合いです。おたがい名前も知りません。犬友達とはそんなもので、住所も名前も知らない相手が多いのです。
今年の夏は酷暑だったので、夕刻おそく散歩に出る日が多く、彼女らとも2か月ほど会っていません。涼しくなったので早めに散歩に出るようになり、出会うかと思ったのにパナソニックオープンというわけです。
思い起こすと社会へ出て3~4年のころ、わたしは食料品関係の小さな業界紙に1年ほど勤務しました。記者とは名ばかりの広告取り要員で早々に転職をきめたのですが、その編集長がゴルフのシングルプレイヤーでした。2~3回打ち放しに付き合ったことがあります。
投手の球ではなく静止した球を打つのだから簡単だろうと思っていたのに、何度か空振りする始末。ジャストミートするのさえ難しいのを知りました。まして打球のコースを制御するなんて考えられません。
ゴルフなんて老人のスポーツだと思っていたこともあって、それきり縁を切りました。後年、太陽酸素KKの創始者川口源兵衛氏の伝記を書いたとき、
「茨木カントリーの会員になりたかったら保証人を引き受けるよ」
と川口氏が云ってくれたことがあります。
会員権が1000万円だというので、高が遊びになんでそんな大金を、と思って断りました。茨木カントリーは名門で、会員権は世襲だそうですが、あのとき思い切って買っておけば一財産になったのに、といまは残念です。そのわたしが老人になり、稼げなくなってから茨木カントリーの近くに住んでいるのだから人生は皮肉です。
わたしの代わりなのかどうか、いまは妻がゴルフをやっています。もうトシで足腰が痛い痛いといいながら続けているのを見ると、よほど面白いのでしょう。かなりの遊び人が他愛なくハマる理由が妻を見ていてよくわかります。
妻がゴルフ仲間と一緒に関東へ旅行したさい、ゴルフ場でずっと昔に長嶋茂雄、数年前に高橋由伸に会ったことがあるそうです。そのときの対応が二人ともじつに良かったらしく、以後、わたしと同様巨人ファンになりました。おかげで巨人阪神戦を家庭に持ち込まずに済んで助かっています。
わたしが7年ほど勤務した化学会社では社長、専務がともにシングルプレイヤーでした。その影響で社員は管理職になるとゴルフ道具を買い、入門するのでした。エライさんと接触するチャンスが増えるのと、上場企業の管理職と云う社会的地位を得た満足感からゴルフを始めるのでしょう。アホらしいのでわたしは管理職になってもゴルフ入門はしませんでした。専務がイヤな男で、近づいて胡麻をする気になれなかったせいもあります。
文士になってからもゴルフはやりませんでした。なんとなく文士にゴルフは似合わない気がしていたのです。ところが昔は文壇に丹羽文雄学校というのがあったらしい。大作家丹羽文雄がシングルの腕前だったとかで、売れっ子作家がこぞって丹羽氏の教えを乞うたものだそうです。その教え子の一人が打ち放しで練習するのをテレビで見たことがありますが、いやはやひどいフォームなので拍子抜けしました。丹羽さんをのぞいて文士は運動神経がにぶいのでしょう。
その話をある編集者にしたところ、
「アベさん、ゴルフだけはやらないでください。われわれがどれだけ迷惑しているか」
と顔をしかめていました。
作家からゴルフをやろうと声がかかると、編集者はメンバーを集めるのに四苦八苦するのだそうです。わたしがゴルフに手を出さなかった最大の理由がこの話だったのかもしれません。再度云いますが、文士にゴルフは似合わないのです。
ともかく今週は茨木カントリーでパナソニックオープンです。いつもの散歩道が混雑するので避けたいのですが、ラビが淋しそうなのでおねえちゃんたちに会いにゆきます。いや、会いたがっているのはこのわたしかもしれません。なんせ最近は北新地にいかないので、若い女性と口をきくチャンスがないものですから。