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2011年7月15日 2:27 PM

テレマン室内オーケストラ

 今月の初め、延原武春指揮、テレマン室内オーケストラによるベートヴェンの第9交響曲を聴きました。。
  日本テレマン協会の第200回の定期演奏会だったのだが、うかつな話、わたしは延原指揮の大阪フイルの演奏会だと思っていました。。テレマン室内オケの第 9をわたしはこれまで聴いたことがなかったし、一昨年から延原指揮、大阪フィルによるベートーヴェンの第5、第6、第7、第8シンフォニーを聴いてきたの で、その締めくくりの第9だと思い込んでいたのです。第9は年末の恒例行事なのでなんだか聴きに行く気がしなかったし、合唱団とあわせて100名もの大編 成を要する第9を室内オーケストラが演奏するわけがないと思いこんでいました。
 延原氏の振る大フイルのベートーヴェンはどれも斬 新で、曲にたいするわたしたち凡俗の紋切り型の理解を一変させてくれます。深刻、豪壮なはずの第5、第7は爽快だったし、のどかで牧歌的な第6は華麗、壮 大、快く均斉のとれた第8は力感あるれる名曲に変わっていました。わたしは第7がなんだか下品な感じがして好きではなかったのですが、延原、大フイルの演 奏によって印象が一変、興奮をだれかと分かち合うべく帰りに北新地の音楽酒場へ寄り道し、朗らかに酔っ払いました。
 さて、今回の 第9も気持ちのよい演奏でした。合唱団をあわせて60名程度の編成だったと思いますが、速いテンポの溌剌とした仕上げで大いに楽しめました。小編成なだけ 第9の重厚さ、荘重さはなかったけど、それがかえって新鮮で、延原氏サスガの印象でした。合唱の章がとくにすがすがしく明朗で、帰り道に北新地へ立ち寄る 口実になりました。
 テレマン室内オーケストラの毎月の定期コンサートへわたしはできるだけ足を運ぶようにしています。通常は核に なる7,8名のの編成でビバルディ、テレマン、バッハ、ヘンデル、モーツアルト、ベートーヴェンなどを聴かせてくれます。メンバーはいずれもソリストで通 用する腕前で、一つ一つの楽器の音がはっきりと聞こえ、しかも絶妙のアンサンブルで陶然とさせてくれます。会場は古典音楽の演奏会にふさわしい由緒ある大 阪倶楽部で、客席数は200名ほど。古楽器が使われるせいもあって、テレマンの「食卓の音楽」の演奏を聴きながら豪勢な食事を楽しんだヨーロッパの貴族の 気分が味わえます。あれで休憩時間に赤ワインが飲めれば最高なのですが。
 延原武春氏は60代の後半のはず。一介のオーボエ奏者か ら出発して昭和38年にテレマン、アンサンブルを結成、今日まで室内オーケストラを運営してきたと紹介文にあります。文化不毛の地といわれる大阪で、室内 オーケストラそれもバロック音楽を主なレパートリイにしてやってゆくのがどんなに大変か、想像するだけで目がくらみます。よほどの情熱と経営手腕がないと できないことです。あわせて延原門下からは中野振一郎、高田泰治(いずれもチェンバロ)、浅井咲乃(ヴァイオリン)、曾田健(チェロ)らの名手が輩出して います。彼の指導した演奏家はそれこそ星の数ほどいるはずで、彼は関西音楽界の重鎮、大御所といってよい存在のはずです。数年前ドイツ連邦共和国から叙勲 されるにいたり、なおのことその感を深くします。
 ところが延原氏はすこしも偉ぶらない気さくな人柄です。評判が良くてやや天狗になった若い演奏家にたいして
 「われわれは貴族の食事中、部屋のすみで演奏していた楽団員の子孫なんや。そんな偉いもんとちゃうで」
 とたしなめたという有名な話があります。
 苦労人延原武春の人柄を良く表わした逸話です。あの繊細な音楽的感性と、オーケストラ経営の商才がいかにして両立したのか、そのうち何とか訊き出そうと思っています。
  昨年いずみホールで彼は大阪フィルとともいベートーヴェンの第8シンフォニを演奏しました。わたしたちの常識をぶち壊すすばらしくダイナミックな演奏でし た。タクトをふる彼の姿にわたしはヘミングウエィの【老人と海」を連想しました。老人呼ばわりは失礼かもしれないけど、築いた地位に安住せず、つぎつぎに 新境地を切り開くべく奮闘する姿に、人生の終楽章のあるべき姿を見た思いだったのです。
 ロックだのJ-POPだの世の中は濁った 騒音があふれています。今日7月15日はテレマン室内オーケストラのマンスリーコンサートの日。ラヴェル、サン、サーンス、フォーレ、ドビュッシーから現 代のシャンソンまで。テレマン協会にはめずらしいプログラムが組まれています。聴きにいって帰りはまた北新地なのかしら。
  • 時のわらし

    延原武春氏、彼の髪の毛がふさふさの頃からコンサートに行ってました。
    私の人生に全く関係のない人だけれど、ある人物にまつわる思い出の中に、氏は非常に重要な役どころを演じることになります。
    バロック一筋に、今日まで息長く活躍を続けておられるのは、実力に裏うちされた
    謙虚な人柄の賜物と思います。ブログの内容に全く同感です。
    それにしても先生は音楽にお詳しいですね。
    物書きはいろんなことに造詣が深くなければ人を納得させたり感動させたりするもの
    は書けないということが少し分かりました。
    先生のブログを、カンテラのようにかかげながら、私は人生の
    地理歴史を学んでいきたいと思っています。