mv

2011年11月25日 2:47 PM

ナベツネVS孫正義。オーナー同士の裏日本シリーズ

ことしの日本シリーズは周知のように4勝3敗でソフトバンクが勝利しました。地味な投手戦がつづいたのでテレビ視聴率は史上最低だっ たようです。冷徹な秋山幸二監督が勝った後うれし泣きしたのが印象的でした。やっぱり必死で戦っているのだと納得させられて、わたしはうれしかった。

 同時期に読売巨人軍のお家騒動が発生しました。詳細は週刊誌に任せますが、要するに清武GM兼編成部長がすでに決定したコーチ人事をナベツネ会長にひっくり返されされたことに猛反発し、記者会見をひらいて内情をさらけだした事件です。
 ナベツネ会長は大読売新聞社の事実上の社主。子会社の重役である清武氏がふつうなら刃向かえる相手ではありません。だが、ナベツネ氏の専横、傲慢ぶりは以前からよく知られていたので、一部には喝采する向きもあったようです。
  ナベツネ氏の権力からいえば清武氏はたちまち更迭、球団の体制を入れ替えて再出発するものとわたしは思っていました。子会社の重役の反乱なんか歯牙にもか けないのがふつうは大企業のトップの姿勢です。ところがナベツネ氏はそうではなかった。声明には声明をもって応じ、清武氏が訴訟に踏み切るなら一流弁護士 10人で対するなどといっています。どうも大人の対応ではありません。
 球団の人事にも氏は以前から口出ししていたようです。大読売の事実上の社主が干渉せざるを得ないほど巨人軍は読売にとって大きな存在なのでしょう。「我が社の発展は記者よりも巨人軍に負っている」とエライさんがいったとききました。
  ナベツネ氏はかつてプロ野球の選手たちの組合活動を「たかが選手が」と切り捨てました。代理人制度に反対し、「代理人を連れてきた選手はクビ」と脅したこ ともあります。03年に原監督を更迭したときは「読売グループ内の人事異動」とのたまわったし、「巨人軍が優勝すれば景気がよくなる」とアホなこともいっ ている。
 わたしがナベツネ氏に抱くイメージはそびえ立って地上を見下ろす入道雲です。選手なんか下っ端の使用人にすぎません。監督、コーチも同様です。つねに自分の権力、社会的地位を念頭においてグラウンドを見おろしています。
  グラウンドでは地位も富も関係がなく、野球の巧拙だけで重要性がきまります。そのことを氏はご存知ないようです。たとえばわたしは、すくなくとも球場では ナベツネ氏よりも原辰徳や阿部慎之助や長野久義を敬愛しています。野球をこよなく愛しているからです。ナベツネ氏にはそれがありません。たぶんキャッチ ボールの経験もないから、選手たちのすごさ、偉大さがわからないのです。巨人軍の運営にあれこれ口出しするのは、巨人軍が読売新聞の拡販に大貢献したから であって、野球を愛しているからではないのです。意のままに巨人軍を動かしてみずからの権力の大きさに満足するのが、氏の関わりかたなのでしょう。
  今回ナベツネ氏がコーチ人事をひっくり返したのは原監督が直訴したせいだそうです。清武氏の育成主義にたいして原は従来通りの大物補強主義。シーズン中か ら妙に萎縮した采配ぶりだったけど、独裁者への直訴は感心しません。清武氏の怒るのも当然です。だが、その清武氏にも補強の失敗の反省は見られませんでし た。責任をとる気もなかったようです。「ナベツネ氏は退任、自分は常任監査役」と要求を出したのにはあきれました。なにかネタを掴んで脅したのなら、暴力 団と大差ありません。
 どっちもどっち。くだらない泥仕合です。いまだに「大巨人軍」が拡販の武器になると思っているのでしょうか。大新聞が軒並み部数を減らしている現実を象徴するような騒動です。
  ソフトバンクの孫正義オーナーは試合中、ファンとともに青い風船を振って応援歌を歌っていました。みずからの権力や社会的地位にこだわらず、観客や選手と 一体になって試合を楽しんでいました。同じ独裁者でも球場ではみんなと平等になれる点、ナベツネ氏とは決定的に違っています。試合後、監督始めだれかれか まわず抱き合ってよろこびを共有したあたり、大メデイアの衰退と新通信産業の上昇気運の現れであるような気がしてなりませんでした。
、 グラウンド上の日本シリーズとは関係なく、オーナー同士の日本シリーズをわたしは見せてもらったわけです。孫オーナに野球経験があるのかどうか、わたしは 知りませんが、野球に対する愛着の念を感じさせたのは、孫氏のほうでした。現実社会の束縛や序列をわすれさせてくれるのがプロ野球だということを彼は心得 ています。
 しっかりしてくれ巨人軍。時代が変わったのはたしかだけれど、わたしのような野球少年世代にとって長島、王の記憶だけが支えだという現状に、なんとか新風を吹きこんでもらいたい。