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2012年5月12日 3:10 PM

一億総バクチ打ちの時代

先日、近くの病院で月に一度の糖尿病検査ををしたところ、ヘモグロビンA1cが5.8でした。過去1~2ヶ月の血糖値の平均を表す数値で4.5~5.8が正常とされてきました。
 わたしの数値はここ数年5.4前後でした。それが少々悪化してぎりぎりセーフの段階に後退したわけです。
「いかんなあ。少々飲みすぎたし、甘い物を食べすぎた」
 反省しつつ担当医の診察をうけました。ところが担当医はニコニコして、
[4月からヘモグロビンA1cの基準値が変わったんです。0.4プラスされました。5.8は正常なんですよ」
 といいました。
 きょとんとしてわたしは説明をききました。この4月から日本の基準値が変更され、5.8+0.4=6.2まで正常値とされることになったのです。国際基準よりも0.4低かったのが是正されたらしい。
 薬を飲みながらとはいえ、わたしは5月から一応正常者に分類されるのです。めでたいことのようですが、釈然としません。なぜこれまで国際基準よりも低く設定されていたのか。
 基準値を低く設定すると、糖尿病患者の数が増えます。そのほうが医療機関や製薬会社の収入が増えて税収も伸びます。
 ところが社会の高齢化で糖尿病患者が今以上に増えると、国の医療費が膨大になります。なんとか医療費を縮小せねばならなくなり、基準値の引き上げて患者数を減少させようとしたのでしょう。そうとしかとしか思えないのです。
  わたしのヘモグロビンA1cはここ数年大差ありません。それなのに基準値の変更にによって、「まったく安全」だったり「ぎりぎりセーフ」だったりするので す。この調子では、実態はさほど変わらないのに[やや危険][大いに危険]と評価が変わる可能性もあります。そういえば高血圧の安全基準も以前は[年 齢+90」だったのにいまでは140が基準となっています。むかしならわたしは血圧が170まで許容されるはずだったのに、いまは140~150の段階で 降圧剤を服用しています。どうも騙されているようですっきりしません。
 政府筋の発表する数字が当てにならないのは東北大震災以 降、イヤというほど思い知らされました。原発事故による周辺地域の放射能汚染の安全基準値はあきれるほど千差万別だったし、大地震の発生の確率、その大き さ、被害の予測もまちまちです。高さ30メートルの津波がくるとか、4年以内にマグニチュード8~9の大地震がくるとか諸説紛々。なかには売らんがために 危機感を煽る向きもあるでど、どれを信じて良いのやらわたしたちには見当もつかないのです。
 しっかりした科学的裏付けにもとずく 基準値を出して国の方向づけをする能力など今の政府には期待できません。それどころか福島原発事故の原因究明も対策も不十分のまま、原発を再稼動させよう としています。関西電力はこの夏の電力供給不足をいい立てていますが、その根拠となる数字もあやしい。真夏の甲子園大会の時期さえのりきれば無事という説 もあってわたしたち一般人は何を信じてよいやら途方にくれるばかりです。
 わたしたちの人生は公私ともにギャンブルの様相を呈して います。一人一人の健康を測る基準は国の医療費の都合によって左右されるし、大震災、津波、さらに原発事故にいつ遭遇するかわかりません。クルマの事故は 頻発するし、戦争の危険もないとはいえない。日本に生きること自体がギャンブルなのです。80歳近くまで生きられたわたしなんか大いにツイでいたというべ きでしょう。
 こうしてみれば現代は一億総ギャンブラーの時代です。競馬やパチンコにハマらない人もギャンブラーなのです。そこへまたカジノを持ち込もうという話もある。この日本に住んでなおかつ博奕で儲けようとする人はよほど自分の運に自信があるか鈍感な人なのでしょう。
 そういえばむかし、歌謡曲に股旅物というジャンルがありました。[渡り鳥だよ おいらの旅は」とか「暗い浮世の この裏町を」とか子供の頃口ずさんで母に叱られたものです。[潮来の伊太郎ちょっと見なれば 薄情そうな渡り鳥」」なんて歌もありました。
 あのジャンルはもう消滅しました。一億総ギャンブラーの昨今、旅から旅へのバクチ打ちに現実逃避の夢を託す必要はなくなったのでしょう。怖いのは次代を担う若者たちに、
「あかんヮ。なんぼ頑張っても災害が来たら終わりや」
という気分のひろがることです。あきらめずにやれば道はひらけるという類いの歌がいまは多いけど、なんだかカラ元気のようにきこえます。一生をバクチ打ちですごす度胸をきめ、可能なかぎり備えを固めればまた道はひらけるかもしれません。