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2011年6月16日 2:21 PM

上げ底ニッポン

川上と大下↓

上げ底ニッポン

6月15日の巨人ロッテ戦。東野、成瀬両エースの緊迫した投手戦でした。8回まで2-1でで巨人リード。巨人はラミレスが2本の ソロホームランを打ち、ロッテは走者をおいて今江が2塁打して1点を返した。そして9回表ロッテは野手NO.1ルーキーの伊志嶺翔太が2ランを放って逆 転、その裏の巨人の反撃を抑えて勝利をつかみました。
9回裏の巨人の反撃は2アウトから長野が右前打、つづく阿部慎之助の大飛球が右翼手に好捕されて万事窮すとなりました。。阿部の打球は去年までの使用球ならおそらくスタンドヘ入っていて、「さよならシンちゃん」の盛名をいっそう高くしたでしょう。
プロ野球は今年がら米大リーグと共通規格の低反発球を使用しています。。多くの大飛球がスタンド前で失速したり、野手の頭上を越えかけて捕られたりするよ うになりました。この試合でも9回までに阿部、坂本、小笠原の長打性の大飛球がロッテのセンター岡田幸文の超美技に阻まれてただの飛球と化しました。岡田 の3美技がなければ巨人は2.3点リードしていて9回表にひっくり返されることはなかったと思われます。。
大リーグと同じ球を使うようになった ため、今年のプロ野球は地味な試合が多くなりました。ホームラン数は去年の3分の1に減り、防御率1点台の投手が両リーグ合わせて10名以上もいます。。 投手戦もまあ悪くはないが、ホームランの出る見込みのうすい試合はスリルが乏しい。一発逆転の緊迫感あってこそのプロ野球なのです。巨人ロッテ戦を見てい てわたしはシラけました。。日本のプロ野球は大リーグよりもよく飛ぶ球を使って、打撃戦を多くしていた上げ底野だったとあらためて認識したからです。。日 本のプロ野球は大リーグの下位球団と互角に戦えるとわたしは思っていました。全日本選抜なら向こうの上位チームとも互角にやれるはずでした。ところが大 リーグと同じ球を使うと、とたんに打てなくなりました。とても大リーグには及ばない。日本の野球は3Aかせいぜい3Aに毛の生えた程度なのだと再認識させ られた次第です。
考えてみると、日本人大リーガーでスターになったのは野茂英雄、イチロー、松井秀樹だけでした。松坂大輔は期待されたが、挫折 しかけています。多くの選手が盛りを過ぎてから渡米するハンデはあるにしろ、日本の一流が向こうではレギュラーになるのさえ至難なのです。頭ではそれを知 りながら、わたしは目の前で展開されるプロ野球が本場とさほど変わらぬ水準にあると思っていたました。錯覚することで楽しみを保持してきたわけです。。
昭和52年、王貞治が通算756ホーマーを記録ました。。大リーグ記録はハンク、アーロンの755本です。王は。世界記録を立てたと日本のメディアは囃し 立てました。。彼我のレベルの差を棚上げして世界記録もないものだが、だれ一人そんな野暮な指摘はしなかった。現実はさておいて上げ底の成果でお祭り騒ぎ するのは日本人の得意技なのです。。ナアナアでみんなが盛り上がる。あの騒ぎのとき当の王貞治だけがなんだか具合わるそうにしていたのが印象的でした。。 王の生涯記録は868本。アーロンを抜いての「世界記録」は通過点にすぎなかったのです。。
関連してわたしは昭和24年10月に来日したサン フランシスコ.シールズを思い出すのです。シールズは戦後初めて日本へ遠征してきたアメリカのプロ野球チームで、本場の野球が見られるかと日本中が大騒ぎ でした。戦後9年目なので日本のプロ野球も発展し、川上哲治、大下弘、藤村富美男、青田昇、若林忠志、藤本英雄などがわたしたち野球少年の憧れの的でし た。シールズは大リーグでなく3Aの所属です。
「全日本なら2つ3つは勝てるべ」「いや、巨人軍なら対等にやれるはずだ」わたしたちは興奮して語りあいました。
14日から飛び飛びの日程で試合が始まりました。巨人が13-4で一蹴されたのを皮切りに東日本選抜、西日本選抜、全日本と立て続けに破れ、川上も大下も藤村も子供扱いでした。シールズは7戦7勝で日本遠征を終え、「日本の野球はDクラス」と酷評して帰ってゆきました。
わたしたちはアメリカの強大さを思い知らされました。戦争に負けたのも当然だと納得しました。同時に日本のプロ野球の実力があの程度と知って悲嘆にくれた ものです。でも、野球はおもしろい。野球なしでは生きてゆけない。わたしたちは日本の野球のレベルは問題にせずに楽しもうと暗黙のうちに言い交わしまし た。シールズのことは棚上げしてプロ野球を盛りあげよう。日本中がいわず語らずに約束したわけです。ここから王の756ホーマーを世界記録更新と賞賛する 風土がうまれました。現実ではなくフィクションのプロ野球でもいい、楽しけりゃいいんだとみんなで同意しあったのです。
しかしフィクションはい つかは化けの皮が剥がれます。「神国日本の軍隊はは絶対に不敗」というフィクションは敗戦によって粉砕されました。その10年後、野球の世界でフイクショ ンがつくられた。。日本人はともすると現実よりも架空を愛します。飛ぶ球を使って野球を面白くするなどお手のもの。大相撲がガチンコを建前に隆昌し、怪し くなったのも同じ過程といってよい。
いや、野球や相撲ならまだ罪がない。民主党は政権について2年で化けの皮が剥がれ、原発の安全神話も震災で 粉砕されました。野球であれば上げ底がバレてもロッテの岡田幸文のような俊敏な外野手のファインプレーを見る楽しみが生じます。だが、民主党や原発の化け の皮が剥がれてあとに何が残るのか、わたしたちはほかにどんなフイクション、どんな上げ底の上にいるのか、考えると心配で寝つきがわるくなります。