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2012年6月27日

寝言(3)

岩ノ松は歩きながら頭をさげました。

「たしかに岩ノ松には害意がなく、かかってきた者をふり払っただけかもしれぬな。だが、怪我人が出た。相撲でメシを食っている男が人を投げ飛ばしたりすると、刀で人を斬ったのと同じ扱いになるのだ。たやすく人と争ってはならぬぞ」

大二郎はいいきかせました。

すなおのに岩ノ松はうなずきます。

一同が北十軒川に近づいたとき、向こうから一人の男がころがるように走ってきました。

男は大二郎らに気づくと、精も根も尽き果てたようによろめいて足を止めます。この近くに住む有名な絵師に弟子入している若者でした。

「た、大変です。女が殺されました。赤ん坊も一緒です。は、早く来てください。お、おれは腰がぬけてしまって」

若い衆はふるえながら説明しました。

隣家に住むお妾が赤ん坊ともども何者かに惨殺されたということです。

出かけていた女中がさっき帰宅して惨劇に気づき、腰をぬかしました。悲鳴におどろいた絵師と弟子が隣家に駆けつけ、すさまじい現場を目撃して弟子が注進にきたのです。

「ひ、ひでえものを見ちまった。お妾は九裸にされて、股倉に焼火箸を突っこまれて、斬り刻まれて死んでます。赤ん坊も頭を叩き割られてました。ああむごい。きっと夢に見てうなされます」

弟子は内で大二郎らは現場へ向かいました