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2012年6月27日

寝言(4)

だが、薪はすぐ使えるよう切り割りされて売られるので、鉈一丁あればめし炊き風呂焚きに困らないのです。

大二郎と亀蔵は検屍をつづけました。

「ひでえな。人間の仕わざとは思えぬ」

「乱心したやつがやったんでしょう。口説いてフラれでもしたんですかね」

傷の工合などを大二郎は書きとめます。

新助はあまりの惨状に肝をつぶして、家の外へ逃げ去ったまま帰ってきません。

遺体から流れ出た血がまだ生乾きなのから見て、殺されたのは八ツ半(午後三時)から七ツ(午後四時)にかけてだったようです。

お静の着物はとなりの部屋に脱ぎ散らされていました。賊に脅されて脱いだようです。

手文庫に金は入っていませんでした。殺してさらに金も奪ったもののようです。

「裸にして、もてあそんだすえに殺したようだな。しもの汚れはあるか」

「ありません。いくら乱心者でもここまで無慈悲に壊しちまったあとは、その気が失せるんじゃありませんか」

大二郎も亀蔵も顔に脂汗をうかべています。

男の心の底にある醜悪な欲念に、まともに向かいあった心地でした。

遺体の始末などを町役人にまかせて、大二郎は瓦町の自身番へもどりました。

下っ引を使った聞き込みなどはあすからにして、いまの妾宅に係わりのある者から話をきくことにします。