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2015年2月10日 1:24 AM

自惚れジイサンの記

昔から写真に撮られるのが苦手です。できあがってきた写真を見るたびに、
「なんだ、こんな顔に撮りやがって」といつも思うのです。
自分では自惚れていないつもりですが、自分を撮った写真がつねに物足りな
いのですから、相当な自惚屋であることはたしかです。実物はもっと良い男
だと心の奥底では思っているわけです。。
実物+30%=自己評価 という説があります。人はみんな自分が30%は
実物よりもイケメンだと思っているのです。でないと憂鬱で生きていく元気
がなくなりますからね。
しかし、それにしても最近のわたし自身の写真はひどい。写っているのは紛
れもなくヨボヨボじいさん。目の下がたるみ、目じりにシワが刻まれ、頭は
禿げ、口元に締まりが失せて顔に生気がありません。
体つきはもっと無惨です。猫背で肩がすぼみ、胸がせまい。サイコペニア(加
齢性筋肉減少症)らしく、以前は中年太りを警戒したものなのに、いまにも
しぼんで寝込みそうです。酔っているときはとくにひどい。顔つきにも体つ
きにも締まりがなく、ボケ老人一歩手前。こんな写真、見たくもないのに、
撮影者はわざわざ送ってくれます。
「あんた、けっこう自惚れとるようやが、そろそろ現実に目覚めなはれ。他
人の目にはこんなジイさんとしか映らないのやから」
と引導をわたすつもりなのですかね。
朝、ひげを剃るとき鏡を見ても大してショックをうけません。鏡に向かい合
うときはだれもが瞬間的に良い顔をします。そのせいでしょう。
しかし、声を大にして云いたいのは、小説なんて多少の自惚れがないと書け
ないということです。いや、小説にかぎらず、どんな表現の分野においても、
政治や経済でも実行者には適度の自惚れが必要でしょう。「おれはダメな男。
大した仕事ができそうもない」と消極的な心情では、永久に芽が出ないだろ
うし、女性にモテることもないでしょう。
いや、個人レベルで自惚れがどうあれ、世の中に影響はありません。しかし
権力者が過度の自惚屋だと、国民はエライ目に会います。
日本では鎌倉時代の後半がそう。元寇のとき日本は武士団の健闘と天の恵み
の台風のおかげで国土をまもりました。が、天皇や公家たちは「神国の権威
に外国が屈した」としか思わなかったし、寺社は「自分たちが懸命に祈った
おかげだ」と功を誇りました。おかげで武家勢力の実力を見誤って足利尊氏
に天下を獲られることになります。
近くはあの大東亜戦争。陸海軍の実力は世界一と当時の指導層が自惚れたば
かりに国民はひどい目に会いました。権力者が情勢を感情的に見てしまうと
大きな誤りを犯します。現代の日本もその感性主義、現実無視の習性のため
世界の現状にたいする施策を誤りはせんかと、老人は余計な心配をしてしま
うのです。
自惚れがゆるされないのは辛いけど、老人はあくまで客観的であるべきでし
ょう。冷静に考えてみると、若いころだってお互いそんなにモテはしなかっ
た。いまに始まったことじゃないのです。
謙虚に振り返ると、嫁ハンの有難味がよくわかるではありませんか。こんな男に

きてくれたんだからね。

  • 丹呉泰子

    阿部牧郎さま
    新潟に住む、うちのボケボケの母は、1日おきに食事を作りに来てくれるヘルパーさんに気をつかって話かける父にえらく焼きもちをやいて「女好き!」とか言って責め立てるそうです。これまで使ったこともない言葉が出できてびっくりです。

    • abemaki0894

      丹後泰子さま
      母上が認知症なのですか。大変ですね。人がそれぞれどんな情念を
      抱えて生きているか、突然むき出しにされてたじろぐさまはよくわかる
      ような気がします。小生なんか女房が万一ボケたらなにをいわれるか
      考えただけで恐ろしくなります。
      でも、母上の場合はまだ笑い話にできる程度で、良質ですよ。医学の
      進歩で良い治療法ができるまでそんなに長くないだろうから、親孝行
      頑張ってださい。  マキオ拝