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2011年12月16日 2:55 PM

誤診に気をつけろ

一、二年前から目に異常を感じて、吹田市の眼科クリニックに通っていました。加齢黄斑変性という診断でした。日本人の高齢化にともなって増えてきた眼病で、失明原因の第4位にランクされているそうです。根本的な治療法はまだないということでした。
 月に二度そのクリニックへ通って検査をし、薬をもらっていました。最近調子がよくないので、親戚の眼科医の紹介で京大病院の眼科へゆき、黄斑変性の権威である医師の診察をうけることにしました。。
  この病気はものが歪んで見えたり、視界に黒い影が生じたりするとのことです。だが、わたしにはちょっと違う症状が出ていました。なんというのか、外出時、 まぶしいとは思わないのに目がくらむのです。風景になんだか凹凸ができたような感じで、見にくくて仕方がない。ウォーキングのとき、ふらついたりします。
 めがねをかけると平気なのですが、最近進行したような気がしていました。そこで京大病院へいったのです。
 十一月のなかばに第一回の診察をうけました。綿密な検査の結果、権威である医師が
「加齢黄斑変性ではありません」と診断してくれました。
 だが、異常のあるのはたしかです。なんとも判定がつかないので一ヶ月後、再検査しようということになりました。
  12月15日に再検査をしました。黄斑変性ではないが、角膜の半分がうすくなっている。原因不明だが、急に悪化することはないとのことでした。来年3月に また検査するそうです。失明の恐れが遠のいてわたしは大いにほっとしました。まったくセカンドオピニオンは大事ですね。吹田の眼科クリニックは誤診して、 役にも立たぬ薬をくれていたわけです。
 10年ほど前、わたしはいつも検査に通っている地元の病院で脳の萎縮を指摘され、脳年齢 80歳と診断されました。80歳といえばかの松本清張氏でさえ小説のつじつまが合わなくなった年齢です。わが作家生命もこれで終わりか。わたしは驚愕し、 京大病院の脳分野の権威の診断をうけました。結果、地元の病院の誤診とわかって安心したことがあります。
 二度とも京大病院の診察で助かりました。検査の機材一つをとっても、街のクリニックとの差は素人目にもわかります。
  それよりも今回訪ねてみて、京大病院の偉容にはおどろきました。建物といい、スッタフの数といい、訪れる人の数といい、玄関から中へ入ると大都会そのもの です。どこへいけばよいのか、案内係に教わってもしばらくうろうろしました。10年前はこれほどではなかったような気がします。建物を増築したのだろう か。しかも看護師さんがみんな懇切丁寧です。患者は例外なく弱者で、傍目にもいらいらさせられる者がいるのに、看護師さんは忍耐強く、親切に応対していま した。
 しかも料金は格安。国の医療保険制度のありがたみが身にしみました。
 わたしは昭和8年に京大病院 で生まれました。生後まもないころ、入浴時間にわたしは看護婦さんに浴室へつれていかれました。まもなく帰ってきたわたしを見て母が仰天しました。あきら かによその子だったのです。取り違えられてもどってきたのでした。母は半狂乱になって産婦の部屋をさがしまわり、やっと見つけて赤ん坊を交換しました。
「なんかおかしいと思ってましたわ」
 先方の母親はそういってあっさり交換に応じたそうです。
 家の近所に親しくしていた府立一中の先生がいました。この話をきいて先生は激怒し、新聞に京大病院を非難する投書をしました。それを読んで当時の産科部長と看護婦長が家に詫びにきたそうです。以来京大病院では、生まれた赤ん坊の足首に認識札をつけるようになったらしい。
 長じてわたしはその話をきき、「世が世ならおれは大金持ちの息子だったのだ。間違われて阿部家へきた」などと自称しました。ひょっとしてわたしの母が別の子をつれてかえったのかもしれないけれど、血液型ではまぎれもなくわたしは両親の子のようです。
 そんなわけででわたしは京大病院で生まれたとき、一種の社会貢献をしたわけです。そのわたしが年老いて二度も同病院でセカンドオピニオの恩恵にあずかった。人生はオモロイもんだとつくづく思います。この世を去るときもこの病院の世話になるのでしょうか。
 今回京大病院へいって目についたことですが、眼科の外来はほとんどが高齢者で礼儀正しく服装もきちんとしていました。優秀な医師団への敬意のあらわれなのでしょう。
  これにたいしてわが地元の病院の外来患者にはだらしない格好の者が多い。運動用のウエアだったり、散歩姿だったり、寝間着に近い格好だったりするのです。 正装する必要はないけど、あれでは医師やスタッフに失礼だといつも思います。病院のほうも営利の意識丸出しで「患者さま」などと呼んでいます。つっけんど んにされるよりはマシだけど、どうもおかしい。誤診が多いからバカ丁寧なのだとは思いたくないけれど。ともかく高齢者は一度の診断で満足せず、二度の診察 をうけられるようおすすめします。