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2016年1月27日 1:15 AM

赤ワイン万歳

先夜、久しぶりで会った旧友と北新地で食事して帰る途中、昔馴染みの酒場
マスタ―に会いました。寒い夜だったので客がおらず、客引に出ていたのす。
仕方なく店へ入り、ワインを飲みました。古くからの行きつけの店なので話が
はずみ、禁酒中にも関わらずつい3~4杯飲んでしまいました。
帰宅してすぐ眠り、翌日目覚めると妙に体調がよろしい。京大病院神経内科の
ある情景が思いだされました。
禁酒を言われたのは3年前、検査入院の結果、小脳変性症と間質性肺炎と診断されたときです。ともに原因不明の難病ですが、間質性肺炎はともかく小脳
変性症は酒が原因の一つらしい。さっそくわたしは酒を控えました。それまでは
夕食時に赤ワインを妻とともに飲むのが習慣で、我が家の平和はそれによって
保たれているといって良いくらいでした。
診断されてわたしはピタリと禁酒しました。着手した書き下ろしをなんとか生命あるうちに仕上げたいと念じていたからです。
妻のほうは相変わらず夕食時に一杯やりますが、わたしにはさほど見せびらか
されている気持になりませんでした。。病気が進行して寝たきりになるのが怖
かったからです。小脳変性症というのは小脳がゆっくりと委縮し運動神経が衰
え、やがて動けなくなる病気です。人によって進行の速さは違うけど、ふらつ
き、杖1本、2本、寝たり起きたりなどの段階があって、最終の寝たきりにな
るまで数年を要するのが普通なようです。
禁酒に加えて体操、ウォ―キングなど真面目やった結果なのか、抱え込んだ2
つの難病はともにごく微細な進行のようです。この状態なら90歳近くまで生
きられそうだと最近は調子にのって思うようになりました。
「赤ワインは血管などに良い作用があると喧伝されています。それでも禁酒せ
ないかんのですか」
わたしは京大病院の担当医に訊いたことがあります。
担当医はわたしの小脳変性症が微細ながらも進行中であり、禁酒も実行中なのを確かめて、
「うーん、アベさんの場合、ワインは関係ないみたいですな」
と答えました。良心的な名医です。
以来わたしは月に1~2度は飲むようになりました。
しかし先夜はかつてのように何杯も飲んでいます。旧友と一緒、馴染みの店と
いうのでペースがあがりました。食事のとき1~2杯は飲んだから全部合わせ
るとかなりのモンになります。翌朝起きたときはときは、ふらつきがすすんで
いるのではと心配でしたが、かえって好調。体操もウォ―キングも大関琴奨菊のように快調でした。酔って熟睡したせいもあるでしょうが、やっぱり赤ワインはわたしの場合、小脳変性症に効くのだと考えたくなります。
加齢による腰痛、ひざ痛などをわたしは人並みにもちあわせています。2難病
と合わせて一々気にしていたら仕事にならんほど時間をとられます。
それにしても小説を書くのは幸せな行為です。意識が作業に集中して2難病のことも腰痛ひざ痛もわすれていられますから。本が売れなくて出版社が困って
いることも、わが家の預金が心細くなったことも、スマホ全盛でわれら活字
人間にはこの上なく生きにくい時代になったことも、書いているうちは全部わ
すれていられます。現実逃避ができるのです。
現実逃避のなかにしか現実突破の方法がない。文士とはつくずく矛盾に満ちた存在なのです。
ああ赤ワインよ、酔っているときは書いてるとき同様にシアワセなのです。生
活から遠ざからんでくれ。「赤ワインで難病を克服」という本でも書きますか。
それなら書いているうちはシアワセでいられます。
いや、最近はブルゴーニュの赤ワインが中国の爆買いで手に入りにくくなった
そうです。こんな話を聞くと、赤ワインで酔っても「日本が中國の属国になった」
という悪夢にうなされるだけかもしれません。
ああ、それにしても今夜も飲みたいなあ。