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2016年1月9日 3:31 AM

雪のないお正月

新年早々ブログの更新が遅れました。唯一の連載が急に打切りとなり、山の
ような資料を読み直していたからです。資料はどれもコピーした紙切れで、
一応テーマ別にクリップでとじてあるのですが、すぐにバラバラになります。
必要な紙切れを探し出すのに大変手間がかかりました。
有名人松下幸之助の伝記小説は資料から踏み出す自由がありません。書いていてんなに楽しくはなかったです。なんせ主人公は超大物。書き手は二流の小説家なのですからね。
若いころと違ってPCを使うと日に七、八枚しか書けないのに、過信して毎
回のように締め切りが遅れ編集部には迷惑をかけました。でも、これで自由
になったので念願の書き下ろしはすすむだろうし、ブログ更新も遅れないよ
うにするつもりです。
話は変るけど、今年は暖冬でユニクロのヒートテックが売れないそうです。
テレビでそれを知ってわが身を顧みました。着ぶくれています。トシのせい
か例年よりも寒いというのが実感です。
スキー場も雪が降らなくて大変なようです。わたしが中学、高校をすごした
秋田県では想像もつかない現象です。わたしが秋田へ疎開したのは小学校5年から6年へ上がる春休みの間でした。列車をおりて村へ歩くとき、見渡す限りの雪景色なのに仰天しました。村へ着き、2週間ほどたってからスキー場へ行きました。
スキー場は村外れの小山でした。大勢の子供たちがスキーをはいて滑ったり
山へ登ったりしています。わたしは新品のスキーをはいて動き出したのです
が、歩くだけでズデンと転んでしまいました。
何とか起きて服の雪を払っていると、大勢の子が見物にきました。日焼けし
た顔を好奇心でふくらませてわたしを見守っています。わたしは大いに緊張
して再度動き出しました。そしてすぐに転びました。すると村の子供たちは
歓声をあげて喜んだのです。
「京都から来たマキオ。まだ滑る前に転んだで」
「駄目だなあ。勉強ばかりできても、スキーは全然滑れねえもの」
「やめれやめれマキオ。家サ帰って炬燵サ入ってろ」
みんな勝手なことをいいます。滑り方を教えてやると言い出す者は皆無です。
わたしが疎開児童なのでスキーが初めてだとみんな知っているはずです。そ れなのにわたしの初心者ぶりを笑い者にする。村の子供たちの意地悪は予想
外で、わたしはショックをうけました。
「お前スキーは初めてなんだべ。こうやって滑るのだよ」
村の子供に親切に教えてくれるとわたしは信じていたのです。
甘かったわけです。他人に助けてもらえると思っていました。
以後わたしは真剣にスキーの練習をしませんでした。暗くなるとスキー場へ
行ってこっそり練習したりしました。だが、それで上達するほどスキーは容
易なスポーツではなかったのです。
わたしは村の子供を内心では蔑視していました。彼らは京都の小学校なら

ビリに近い連中ばかりです。彼らにスキーで負けるなんて、自分を赦せなかったのです。それならそれで猛練習で上達すればよかったのに;そうはいかないのがわたしの駄目なところでした。自尊心が強くて村の子供たちに溶け込めなかったわけです。
サラリーマン時代Kという総務課長がいました。彼は大阪に一家をかまえて
いて、毎年正月近くなると妙にやさしくなるのです。
「アベくん、いつ秋田へ帰るのや。28日か。列車が混んで大変やな。まあ
せいぜい気をつけてな。風邪なんか引かんように」
眼鏡をかけてひたいの狭い、実直そのものの人物です。あまり毎年同じこと
を言われるので、ある年に訊いてみました。
「K課長はどこのご出身なんですか」
「うん、わしは新潟やねん。君を見ると若いころを思い出してな。世話を焼き
とうなるのや」
わたしは納得が行きました。そしてK課長にこれまでにない親しみを感じま
した。雪国は雪国同士でなにか通い合うものがあったのです。未開で不便な
土地の出身者は、何かと苦労した過去を背負っています。
関西でわたしは一時競馬に入れあげていました。女子大生だった妻と当時は
アツアツだったので、デートを重ねていました。ある冬の日私と妻は淀の
競馬場へゆきました。途中、雪が降ってきました。平場にいた観客は大慌て
でスタンドの屋根の下へ逃げてゆきます。妻もそうする気でいたようです。
「雪は雨と違う。降られても逃げる必要はないよ。少々濡れても服はすぐ乾く」
わたしは妻にいいきかせました。その間にも観客は屋根の下へ逃げ込んでゆ
きます。数千人の観客が一斉にスタンドを登り屋根の下へ逃げるのだから、
ちょっとした壮観でした。
「うーん、関西人は雪と雨の区別がつかんのだな」
競馬場の観客はまるで雨に降られたように屋根の下へ逃げました。

わたしは降られながら悠然としていました。雪に慣れていない者と慣れている者の違いです。
もし雪国出身者と近畿出身者が雪合戦をやったら雪国方が絶対に有利でし
ょう。雪玉が飛んでくると関西人は慌てて物陰へ隠れます。命中すれば痛い
と思うからです。雪国勢は雪玉が当たっても平気。積極的にどんどん攻めて
勝利をにぎるでしょう。
雪国出身者は大都会へ出て苦労します。ローンで家を買って完済するのは
定年前。ゆとりある人生とは言えないようです。このハンデを埋めようとした
のが田中角栄。最近見直されたようだけど、角栄氏は天才です。
松下幸之助の次は田中角栄を書こうかなあ。彼の娘に会って話を聞く場面を

考えたら、やっぱりやめたほうが良いかな。