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2016年2月3日 1:12 AM

苦労人クラブ

禁酒中にもかかわらず最近、酒を飲む機会が増えました。十三あたりの居酒屋が分相応だと思うのだけど、一緒に飲む相手が然るべき方々なのでどうしても
北新地へ足が向きます。
北新地といっても最近は様相が変わりました。若いころのわたしなんか本通り
を通るだけで危険地帯へ入ったような怯えを感じたものです。軒を連ねる高級
クラブの入り口が、まるでお化け屋敷の入り口のように気味悪く見えました。
あそこから中へ入ると、ゼニがなんぼあっても足りない領域になってとても無
事には還れないと思われたのです。

万博の開催中なんか高級クラブのお客が一列になって前のお客の両肩に両手を置き、音楽に合わせて大蛇のように本通りへ踊り出る光景を眺めて、
「アホか。ジジイども早く死んでしまえ」
と羨望半分呪ったものでした。
いまは坐っただけで5万円とか10万円とかいうギンギラの店は減り、サラリ
ーマン向きの飲み屋街になったようです。その代り美人ホステスが減ったよう
です。日本女性も酔客のご機嫌を取るのがアホらしくなった気位の高い人が増えたのでしょうが、10年ほど前までは週1度は飲みに出かけたわたしとして
はやや寂しい思いもあります。
金曜日はテレマン室内管弦楽団の指揮者兼オーボェ奏者の延原武春氏と同代表の中野順哉氏が一緒でした。延原氏は若いころからオーボェ奏者として鳴らし、テレマン室内管弦楽団を立ち上げて筆舌に尽くせぬ苦労のすえ、ドイツ文部省から勲章をもらった人です。中野氏は同楽団の代表として数々の新企画を成功させ、かたわら小説修行をして秋には第1作が出版されるそうです。延原氏は還暦すぎだけど、中野氏はまだ40代。新旧2人の苦労人と飲みながら話すと
実に楽しい。ショパンの第一ピアノ協奏曲について、延原氏の、
「ピアノ演奏の部分は美しいけど、オケのパートは稚拙でつまらん。ショパン
は初演のときオケを稚拙にして自分は目立ちたかったんやろなあ」
などという話は面白くて示唆に富んでいます。時間のたつのをわすれました。
先週コンサートで偶然会ったT氏が音楽にあまりくわしくないだけ、延原さん
らとと一緒に飲む楽しさは格別でした。
考えてみると、飲み友達として楽しいのは少年期または若いころ苦労した人に
かぎられるようです。野坂昭如三さん、黒岩重吾さん、それに延原さんら著名
人らがそれに当たります。中野氏は天才といわれた兄の陰でどれだけの苦労を重ねたことか。ほかに数人わたしは一緒に飲んで楽しい友人をもっています。
まあ幸せな男なのでしょう。
ジイサンらしくここで説諭を一席。若いころの苦労は買ってでもせよ。しかし
老いてからの苦労はさきが短いだけ実りがない。売れるもんなら売りたいです
な。安うしときまっせ。