負けじの大二郎 – 寝言

最新話
寝言16)

およそ一ヶ月後、大二郎が町廻りから南町奉行所へ帰ると、思いがけない人物が詰所で待っていました。長崎の貿易会所出入りの唐通事(唐語の通訳)佐藤幸吉です。 佐藤は江戸南町奉行にあてた長崎奉行の書面をもってきました。南町奉行は […]

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寝言(1)

満開にはまだ間があるのですが、墨田川の堤は桜見物の客でにぎわっていました。 家族づれや仲間どうしでくりだした大勢の人々が、のんびりと堤をゆききしています。 もう夕刻なのですが、どの顔も桜の色に染まったように明るく見えます […]

寝言(2)

「よし、いこう。けが人が出たからにゃ、見逃しちゃおれぬ」 亀蔵らに声をかけて大二郎は歩きだしました。 その力士あがりの男を捕えて吟味しなければなりません。 「旦那、着替えはいいんですかい」 新助が追いついてきて声をかけま […]

寝言(3)

岩ノ松は歩きながら頭をさげました。 「たしかに岩ノ松には害意がなく、かかってきた者をふり払っただけかもしれぬな。だが、怪我人が出た。相撲でメシを食っている男が人を投げ飛ばしたりすると、刀で人を斬ったのと同じ扱いになるのだ […]

寝言(4)

だが、薪はすぐ使えるよう切り割りされて売られるので、鉈一丁あればめし炊き風呂焚きに困らないのです。 大二郎と亀蔵は検屍をつづけました。 「ひでえな。人間の仕わざとは思えぬ」 「乱心したやつがやったんでしょう。口説いてフラ […]

寝言’5)

この家の内情にもっとも通じている女中のくみから、まず話をきくことにしました。 くみは四十近い、見るからに海千山千の女です。お静がこの家に住むようになってすぐ口入屋の世話で奉公するようになったということでした 旦那の青島屋 […]

寝言(6)

この家の内情にもっとも通じている女中のくみから、まず話をきくことにしました。 くみは四十近い、見るからに海千山千の女です。お静がこの家に住むようになってすぐ口入屋の世話で奉公するようになったということでした 旦那の青島屋 […]

寝言(7)

竜右衛門は柔和な顔つきですが、細い目に油断ならぬ光があります。顔はいかにも精力家らしく、艶やかに脂光りしています。くみが気味悪がるのも無理はないようです。 くみが話したとおり竜右衛門は月に四、五回、妾宅をたずねたというこ […]

寝言(8)

が、急に竜右衛門が口をひらきました。 「そうなのか。どうりで近ごろお静の様子がおかしいと思っておりました。三十両用立ててくれと申すのですよ。それまでは贅沢をいわない、よくできた女でしたのに」 「三十両か。なんにつかう金な […]

寝言(9)

「そうなのか。どうりで近ごろお静の様子がおかしいと思っておりました。三十両用立ててくれと申すのですよ。それまでは贅沢をいわない、よくできた女でしたのに」 「三十両か。なんにつかう金なのかな」 「父親が喘息を病んで、医者や […]

寝言(10)

「おい圭之介、町方の者だ。ここをあけな。おめえがいるのはわかっている。居留守をつかうなら、戸をやぶって押入るぞ」 すると表戸があき、色白の若い男が顔を出しました。 「あ、あっしじゃありません。あの家をたずねたとき、お、お […]

寝言(11)

あくる日、大二郎は南芽場町の大番屋で、人形師圭之介の調べにあたりました。 圭之介は二十二歳。品川の建具職人の伜で、十五のときから人形師に弟子入りしたということです。 最初は住込みだったが、昨年春から通いの職人になり、長屋 […]

二、三日して圭之介と青島屋竜右衛門の身辺がしだいに明らかになりました。 圭之介はこの春以来、何度か賭場へ出入りしていたようです。 二月のなかば圭之介は若松人形店から給金十両を前借りしています。博奕の元金にしたらしいが、あ […]

寝言(12)

あくる日、大二郎は本所、「待乳(まっち)の渡し」の近くにある「播磨屋」へ向かいました。先日投げ飛ばした岩ノ松三五郎に訊きたいことがあるのです。 瓦町の自身番で岩ノ松の調べ書をつくったさい、彼が長崎の近在の村の出であること […]

寝言’13)

二、三日して圭之介と青島屋竜右衛門の身辺がしだいに明らかになりました。 圭之介はこの春以来、何度か賭場へ出入りしていたようです。 二月のなかば圭之介は若松人形店から給金十両を前借りしています。博奕の元金にしたらしいが、あ […]

寝言(14)

いっぽうで青島屋竜右衛門の人となりもほぼ明らかになってきました。 竜右衛門は爪に火をともすようにして金を貯め、十数年まえに小さな質屋を出しました。朝から晩まで店をあけて客に愛想をいい、かたわら金銀の相場で儲けて、やがて両 […]

寝言(14)

とりあえず青島屋竜右衛門が唐手をよくするかどうか、調べることにしました。 三月末の晴れた日、青島屋の本店を見張っていた下っ引から、いそぎの報せが入りました。竜右衛門が娘のさちと手代、女中各一人をつれて小石川の水戸屋敷に花 […]

寝言(15)

あくる日、大二郎は亀蔵、新助をつれて、死んだお静の家を数日ぶりでたずねました。 事件のあと、家はしめきられています。女中のくみは親もとへ帰ったということでした。 大二郎らは雨戸をこじあけて家へあがりこみました。なかは惨劇 […]

寝言16)

およそ一ヶ月後、大二郎が町廻りから南町奉行所へ帰ると、思いがけない人物が詰所で待っていました。長崎の貿易会所出入りの唐通事(唐語の通訳)佐藤幸吉です。 佐藤は江戸南町奉行にあてた長崎奉行の書面をもってきました。南町奉行は […]