負けじの大二郎 – 猫が鳴いている

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猫が鳴いている 【最終回)

示されたとおり、翌朝はやく寺子屋へいってみました。手紙の通り種太郎は縛られて、頭から布の袋をかぶって横になっていたのです。枕もとに五両の紙包みがありました。 種太郎は眠っています。この金をもらって逃げよう。決心して小判を […]

一覧
猫が鳴いている(1)

    夕刻、大町大二郎は南町奉行所から帰宅すると、ふだん着に着替えて「書」の稽古をはじめました。 昨日までの雨がやんで、きょうは陽射しが強く、すこし動くと汗ばんできます。 庭のすみの向日葵(ひまわり […]

猫が鳴いてmいる(3)

主役の賊が金を受けとったら、かくれている仲間に合図を送って逃げだすでしょう。 仲間は合図を見て、人質をその場において逃走します。 だが、もしも主役の賊が近くに捕り方のひそんでいるに気づいた場合、金を放りだして逃げだすでし […]

猫が鳴いている(4)

やがて刻限の四つ半になりました。喜平次が与兵衛を呼びに来ます。 与兵衛は手提げ金庫を風呂敷に包み、背中にかついで料理茶屋から出てゆきました。 喜平次がしすこし間をおいてあとを追います。付き添い無用と投げ文にあったので、あ […]

猫が鳴いている(5)

「今日は六月二十三日。子供のいなくなったのは二十一日だ。すると、おまえさんが金を美倉橋へ運んだころには、この子はもう殺されていたのかもしれない。捕り方を待ちぶせさせたりして、とんだ骨折り損だった」 大二郎は苦笑いして棺に […]

猫が鳴いている(6)

「――屋号は申せませぬが、私は万世橋南詰めのさる大店へ奉公する者でございます。 じつは私どもの女主人が先日浅草でおまえさまの一人相撲をごらんになり、たいそう気にいってしまいわれました。ぜひ、もう一度見たいと申しております […]

猫が鳴いている(7)

あくる日の四ツ〈午前十時〉から、三河屋の菩提寺で葬式がおこなわれました。 参列者は通夜よりもはるかに多数でした。 寺子屋の子供たちも数人の師匠につれられて読経のあと焼香しました。だが、墓地への埋葬には加わらずにみんな帰っ […]

猫が鳴いてイた(9)

薬種屋のご隠居は毎朝、散歩がてら東紺屋町のお玉稲荷へお参りにいくことにしています。 その日大和町の月空寺のそばを通りかかると、塀の上で一匹のキジ猫が鳴き立てていました。なに気なく境内に目をやると、仙吉が池のはたにしゃがん […]

猫が鳴いている(10)

些細な横流しなどお店者(たなもの)ならだれでもやっています。店側も咎め立てしません。安い給料の埋めあわせのためです。しかし、気に入らない使用人を辞めさせるときは、横流しは格好の口実になります。 「仙吉が大変なことをしでか […]

猫が鳴いていた(11)

大二郎は思い出話をはじめました。 七歳のとき、父が知人から紀州犬の雄の子犬をもらってきました。 ケンスケと名づけて大二郎は可愛がりました。 毎日いっしょに堀端を駆けまわったり、神社の境内で遊んだりしました。ヤキイモや甘栗 […]

猫がないていた(12)

――思い出話を終えて、大二郎はほほえんで初枝をみつめました。 初枝はじっと大二郎に抱かれた子猫をみつめています。 「もうお察しのことだろうが、初枝どのにもぜひ二代目のユキを差しあげようと思いましてな。この子、育ててやって […]

猫が鳴いてイた(13)

大二郎は帰宅して、母の八重が用意してくれた夕餉の膳に向かいあいました。 例によってかるく晩酌をします。母が世間話をしながら酌をしてくれました。客のない夜はいつもこうなります。 今夜の大二郎はだまりがちでした。河野初枝のこ […]

猫が鳴いていた(14)

あくる日大二郎が町廻りを終えて南町奉行所へ帰ると、河野初枝から書状がとどいていました。 種太郎殺しの一件の顛末書と遺書をかねた書状のようです。大二郎は別室に入って心静かに封を切りました。 丁重なお礼のあと、初枝は美しい草 […]

猫が鳴いていた(15)

あくる朝大二郎は亀蔵、新助をつれて田町の自身番へ出向きました。夜明け島はすでに板の間で待っていました。 おおよその事情を告げてから大二郎は尋問に入りました。 「女師匠はおまえに二通目の手紙をとどけたといっている。種次郎が […]

猫が鳴いている 【最終回)

示されたとおり、翌朝はやく寺子屋へいってみました。手紙の通り種太郎は縛られて、頭から布の袋をかぶって横になっていたのです。枕もとに五両の紙包みがありました。 種太郎は眠っています。この金をもらって逃げよう。決心して小判を […]