負けじの大二郎 – 至福のとき
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至福のとき(11) | だが、舞台子あがりとなれば話は変ります。歌舞伎の舞台に立つ者はどんな化粧でもやってのけます。理助のような美男でも、あっというまにあばた面の片目の男に紛装できるのです。 疑いの余地が出てきました。さっそく理助を調べなくては […] |
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至福のとき(1) | その日大町大二郎は目明かしの喜平次と中間(ちゅうげん)の新助を連れて本所一帯を見廻りました。 夕刻近く通町をへて帰途につきました。このあたりは江戸で一番の目抜き通りです。 かんか […] |
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至福のとき(2) | 出入りの植木屋の伜が目明しなのを思いだして、「京屋」はまっさきに喜平次へ急を知らせました。 早朝から喜平次は大二郎の宅へ駆け込んだのです。 大二郎は新助をつれて「京屋」へ直行しました。、 「京屋」は間口十間。界隈(かいわ […] |
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至福のとき(3) | 大二郎はつぎに当主の京屋幸兵衛を呼んで話をききました。 幸兵衛はみつのすぐ下の弟で、二つ年下の二十七歳になります。二年まえに家督を継ぎました。 「隠居所にはいつも大金をおいていたのか。たまたまなのか」 まっさきに大二郎は […] |
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至福のとき(4) | 大二郎は幸兵衛をさがらせ、理助を玄関の間へ呼びだしました。 相変わらず男も惚れ惚れする男前です。冷たいほどととのった顔立ちが、泣いたせいでほどよいぬくもりをおびています。 「とんだことだったな。女房を亡くした上、料理茶屋 […] |
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至福のとき(5) | みつは理助と遊んだあと、代金が惜しいから駕籠は呼ばなかったようです。いつも正七に提灯をもたせて歩いて帰りました。雪の夜でもお構いなし。過分な駄賃が出るから正七は我慢できるのだとみんな思っていました。 「おみつさんはなぜそ […] |
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至福のとき(6) | これは病いなのだ。説諭しても無駄だろう。弥市はむしろ哀れに思って見て見ぬふりをしてきたのです。 「たしかに世の中には妙な病いをもった男が数多くいるよ。女の腰巻きを欲しがる奴とか、白足袋をあつめて喜んでいる奴とか」 「銭湯 […] |
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至福のとき(7) | 神田多町にも芸者あがりのまつという三味線の師匠がいます。弟子の数はやはり三十人ばかり。ひょっとして卓治を知っているかもしれません。そんなカンが働いて喜平次はまつを訪ねたのです。 おどろいたことにまつの門下にも片目の男がい […] |
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至福のとき(8) | 目明し二人を残して、大二郎は一同を隠居所から退去させました。 「わかったことが二つある。一つは賊が入れ墨をさとに見せつけたことだ。わざわざ左腕を行灯に向けて見えやすいようにした」 ふつうなら目印に目なる入れ墨を隠すはずで […] |
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至福のとき(9) | 亀蔵は目を丸くして、聞き込んだいきさつを大二郎に告げました。 「正七は案外殊勝な若い衆ですな。白牛酪を削ったのは良くねえが、寝たきりの婆さんに恩返ししたんですから」 「なるほど。人というのはなんとも厄介な生き物だな。まっ […] |
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至福のとき(10) | すぐに喜平次が町役人をつれて回向院へ出向きました。 ところが千体地蔵尊の供養会の直後とあって寺全体が込み合っています。喜平次は受付の僧に正七を呼んでくれとたのみましたが、相手にされませんでした。何百人もの僧のうち、俗名し […] |
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至福のとき(11) | だが、舞台子あがりとなれば話は変ります。歌舞伎の舞台に立つ者はどんな化粧でもやってのけます。理助のような美男でも、あっというまにあばた面の片目の男に紛装できるのです。 疑いの余地が出てきました。さっそく理助を調べなくては […] |